帯域制限パルス     Bandlimited pulse

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 無線通信において周波数は公共の財産です。 どんな通信も、使用できる周波数帯域が許可されて始めて実用できます。 許可された周波数帯域の中に信号エネルギーを押し込める技術が変調です。 送りたい信号をベースバンド(基底帯域)信号といいますが、振幅変調 (AM: Amplitude Modulation ) は、ベースバンド信号の周波数成分(スペクトルと呼ぶ)を許可された高い周波数帯域へそのまま平行移動します。 したがって、ベースバンド信号の帯域幅が許可されたチャンネルの帯域幅に制限されていればいいわけです。 線形変調を参照してください。 周波数変調 (FM: Frequency Modulation ) では上のことは厳密に言えませんが、それは周波数変調を参照してください。

パルスの話をするのに、いきなり変調の話が登場するのは唐突かもしれませんが、変調という概念を理解しないと通信で用いるパルスが理解できません。 そういうわけで、まずは変調の仕組みを簡単に分かってください。 一言で振幅変調といってもいろいろ種類がありますが、通常は両側帯波振幅変調BSBAM: Both/Double Side Band Amplitude Modulation ) のことを指します。 ではまず、送信ベースバンドパルスのスペクトルが、BSBAMによって許可された高周波帯域に移動することをたしかめてみましょう。 

パルスを  で表します。 ここでは、実信号としておきましょう。 変数  は時間を表し、 の値は電圧を表すとしましょう。 そして、パルス波形はエネルギーが有限、すなわち、

を満たしているとします。 これを仮定する理由は、下のフーリエ変換が有限な値で決まるためです。 すなわち、無限の大きさをもつスペクトルを排除したわけです。 物理的には、そんなことはあり得ないのですが、念のためということです。

左辺の はパルス が含む周波数成分(スペクトル)を表しています。 BSBAM変調波はパルス  に搬送波 を掛け算して作ります。  を搬送波周波数と呼んでいます。

このスペクトルがどうなるか見てみましょう。 そのために、上式をフーリエ変換してみます。

上の式は、下図のようにスペクトルの平行移動を表しています。 すなわち、ベースバンド信号のスペクトルが半分づつに分かれて正の搬送波周波数 と負の搬送波周波数 のところへ平行移動しました。 したがって、ベースバンドパルス がチャンネルの周波数幅に帯域制限されていれば、変調によって信号の全エネルギーがチャンネル内を通過できることがわかります。 なお、周波数に正と負があることは奇異に感じると思いますが、本当はこのように考えないと変調は理解できません。

さて、許可されたチャンネルを使うためには、送るべきパルスの周波数成分がそのチャンネルの幅を越えてはならないことが分かりました。 それでは、スペクトルの幅が制限されたパルスはどんな形をしているでしょうか? 普通、パルスといえば、下図のような矩形パルスを想像しますね。 パソコンの中を駆け巡っているパルスはきっとこれでしょう。 この図で横軸は秒、縦軸はパルス電圧と見てください。

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では、このパルスのスペクトルを計算してみましょう。 そのためにフーリェ変換してみると、結果は次のようになります。

として、これを描いてみると下のようになります。 横軸は Hz です。

img1.gif

この形から分かるように、矩形パルスは無限に高い周波数成分をもっています。 したがって、帯域が厳密に制限される通信では、こんなパルスを用いることはできません。 このことは、みなさんが使っているケイタイやADSLなど、すべてのパルス通信についていえることです。 

 では、通信では
どんなパルスを使っているでしょうか?

上のストーリーでは、みんな実数値をもつ関数でした。 この実関数で話を進めます。 もちろん複素関数でも同じですが、簡単のためです。 フーリェ変換の逆変換は定数倍を無視すると次のように書けます。

前記したフーリェ変換とずいぶん似ていますね。 違いは、 ですが、複素共役の関係にあります。 したがって、上の両辺の複素共役をとるとフーリェ変換になってしまいます。 このことから、もしパルスを図3のような形にすると、そのスペクトルは図2のようになることがいえます。 図2の横軸を周波数と考えてみてください。 これならば、帯域制限されたチャンネルにすっぽりとはめることができますね。

 LSIエンジニアは、演算速度を上げるため、
図2の矩形パルスを細くすることを追求する。
一方、
通信エンジニアは帯域内にスペクトルを効率よく埋めるため
図3のように裾の長いパルスを追求する。

それでは、グラフの横軸をちゃんと交換して、描きなおしておきましょう。 ついでに、ちょっと現実的に、チャンネル幅を10kHzとした場合の単位を振っておきます。

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上の青色のパルスは標本化関数(sampling function)と呼ばれ、いろんな場面で登場します。 帯域幅  を大きくすれば、パルス  は高くなりながらアコーデオンのように縮みます。 そして、 を無限大にすると、パルス は時刻ゼロの近傍に無限に大きなピークをもってエネルギーが集中します。 極限までエネルギーを集中させたパルスをデルタ関数と呼んでいます。 一般に、フーリエ変換によって結ばれるパルスとそのスペクトルは、一方を伸ばせば(縮めれば)、他方が縮む(伸びる)という反比例の関係にあります。

実際の応用では、正確な矩形スペクトルをもつパルスを回路的に実現することができません。 そこで、矩形スペクトルの肩をなだらかにしたようなパルスを用います。 ナデ肩にすることをロールオフ(roll off するといっています。 広く用いられるロールオフは余弦曲線によるもので、次のようです。 Wの単位は Hz です。

ロールオフ率 を大きくすればするほど、スペクトルの肩はなだらかになります。 それにつれて、パルス

は、下図のように裾が速く減衰するようになります。 ただし、完全にゼロになるわけではありません。

このパルスをよく見ると、ピークを除いてちょうど 秒毎にゼロ交叉していることが分かります。 このことはパルス通信においてものすごく重要な働きをもち、ナイキスト条件と呼んでいます。 もし、パルスの裾が十分減衰してから次のパルスを送るとすれば、単位時間あたりに送れるパルスの個数は大変少なり、高速ディジタル通信が実現できません。 ナイキスト条件が満たされていれば、パルスをちょうどゼロ交叉間隔で送ることができ、高速ディジタル通信を実現することができます。 この原理に関してはアイパターンを参照してください。

 

: 帯域制限されたパルス は時間制限されません。言い換えれば、パルスとそのスペクトルが同時に有限区間内に収まることはないということです。なお、両者のエネルギーを出来るだけ有限区間内に集中させる問題はパルスの不確定性で紹介されています。

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