ケイタイに含まれる通信技術   Outlook of handy phone

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 携帯電話に含まれる通信技術は次の3つに大きく分類できます。

    (1)基地局と端末間で通信を確立・保持させるためのプロトコル処理
    (2)音声や画像を符号化・復号化する圧縮処理
    (3)ディジタル情報を多重化したり、変調したり、判定したりする伝送処理

このページは、3番目について概説します。 送信側から受信側へ信号が処理される様子はほぼ下記のようです。 ただし、あくまでも典型的なものであり、順序が入れ替わったり、一つの処理にまとめられたりすることがあります。 この流れは、携帯電話以外のディジタル通信(CATVやADSLやディジタルTVなど)でも、ほとんど同じです。

  送信側

    1. スクランブル(Scrambling
    2. 誤り訂正符号化(Error Correction Coding
    3. 伝送符号化(Transmission Coding )
    4. パルス成形(Pulse Shaping
    5. 変調(Modulation
    6. 多元接続送信処理(Multiple Access )

  受信側

    1. 復調(Demodulation
    2. パルスの歪み除去(Pulse Detection )
    3. 伝送符号の復号(Transmission Decoding
    4. 誤り訂正の復号(Error Correction Decoding
    5. 逆スクランブル(De-scrambling
    6. 多元接続受信処理(Multiple Access )

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黄色のボックスで示した処理は送信側と受信側で変換・逆変換の対になっています。 これらの役割をごく簡単に紹介しましょう。

 

1.スクランブラー、デスクランブラー
受信側の復調やパルス判定は複雑な制御回路を含みます。 もし規則的な情報、たとえば 送信データ、

・・・0000000000・・・

が送られると、受信ベースバンド信号は一定電圧になってしまい、復調器の制御回路がこの一定信号に固有の最適状態に移行してしまいます。 続いて、別の規則的情報

・・・1010101010・・・

が送られると、正負の繰り返しベースバンド信号が受信され、制御回路は別の最適状態へ遷移します。 このように、送信情報がある規則的系列から別の規則的系列に移ると、これに応じて復調器の状態があっちの最適からこっちの最適へ遷移します。 このことは矛盾がないように思われますが、この切り替わり時間に着目すると、復調器は迷いの行動を起こして、この結果、パルスの判定誤りが増大します。 この問題を解決するのがスクランブラーです。 スクランブラーは規則的なデータ系列を擬似的にランダムにします。 ランダムな情報を受けていると、復調器はランダム系列に最適な唯一の状態に留まり、平均的な意味で最適な状態を保つことができます。 この平均的な最適状態がどのような規則的情報に対しても同じ程度に最適であれば、ランダム化の目的を果たすことができるというわけです。 デスクランブラーはランダム化されたデータ系列を元に戻す回路です。 厳密なことを言えば、本当にランダム化してしまえば、決して元に戻すことはできません。 実際に用いられているスクランブラーはM系列発生器を応用したものです。 M系列発生器は擬似ランダム系列を発生します。 いわば、ランダムの典型といったものです。 「典型的なもの」は一つですからランダムではないのですが、ランダムの代表選手といった感じで理解してください。 詳しくは、スクランブラーを参照してください。

2.誤り訂正符号
通信においては、かならず雑音がつきまといます。 ディジタル通信は正確だと言いますが、決してそうではありません。 パルスにも波形歪みや雑音が加わり、受信器でのパルス判定は誤りを生じます。 一般的にいって、有線通信では雑音は小さく、携帯電話などの移動通信では非常に大きな雑音が加わります。 雑音に起因するパルス判定誤りを改善する技術が誤り訂正符号です。 8ビットのパターンは全部で 個あります。 誤り訂正符号は、この8ビットに、たとえば4ビットを足して12ビットにして送ります。 12ビットの可能な系列の数は全部で 個になりますが、実際の送信データは8ビットですから実質的には4096個の系列の中で256個の系列しか送っていません。 この余裕(冗長)の部分が誤り訂正能力をもちます。 すなわち、12ビット系列の中で定められた256個の送信パターンを予め決めておきます。 そして判定された12ビットに一番近い送信パターンを選択します。 このようにすれば、12ビットが少々誤っても正しい8ビットを判定することができます。 詳しくは、通信路符号化を参照してください。

3.伝送符号化 
ビット列をパルスの電圧値に変換するとき、差動符号化やグレー符号化が施されます。 差動符号化は、伝送過程で生ずる搬送波位相回転の任意性を解決します。 グレー符号化は、シンボル間の判定誤りをビット誤りに換算したときのダメージを最小にしようとするものです。 詳しくは差動・グレーを参照してください。

4.パルス整形と判定
地上TVや衛星TVなどの無線通信も、ISDNやCATVやDSLなどの金属線通信も、光ファイバー通信も、すべての通信は許された周波数帯域の外に信号電力がはみ出ないように通信しなければなりません。このオキテを破ると、隣のチャンネルに迷惑をかけることになり、出荷した製品はすべて回収ということになります。 パルスといえば、誰でも矩形の波形をイメージしてしまいます。 しかし、このように瞬間的にジャンプするパルス波形は無限に高い周波数成分を含み、通信では使用禁止です。 周波数が制限されるパルスは振動的に減衰する形をしていなければなりません。 実際には、このようなパルスを重なり合わせてデータを送っています。 受信器では、これを受けて送信データ(正のパルスか、負のパルスか)を判定しなければなりません。 パルス判定はディジタル通信技術の中で、最も重要かつ難しい技術です。 等化系列判定などが関わってきます。

5.変調と復調
MODEM(モデム)とは、Modulator(変調器)とDemodulator(復調器)の語頭部分をとって合成した単語です。 有線であれ無線であれ、すべての通信は使用する周波数帯域が認可されて始めて可能です。 この周波数帯域の中に信号エネルギーを押し込める操作を変調といいます。 変調された信号を受けて、元のベースバンド帯域に逆変換することを復調といいます。 変調方式は以下のように大きく分類することができます。

  線形変調方式

両側波帯振幅変調:Both Side Band Amplitude Modulation (BSBAM)
例: AMラジオ放送(搬送波挿入)

単側波帯振幅変調:Single Side Band Amplitude Modulation (SSBAM)
例: アナログ電話の基幹多重回線

残留側波帯振幅変調:Vestigial Side Band Amplitude Modulation (VSBAM)
例: 地上アナログTV放送

直交振幅変調:Quadrature Amplitude Modulation (QAM)
例: ほとんどのディジタル通信

  非線形変調方式

周波数変調:Frequency Modulation (FM)
例: FM放送、トランシーバー、低速データ通信、Bluetooth

4.多元接続
たとえ有線通信であっても周波数は有限で貴重です。 まして、無線通信では公共的な貴重な財産です。 この公共財産をみんなで分けあって同時に使用する技術が多元接続 (Multiple Access ) です。 多重化 (Multiplex ) という用語もよく用いられますが、これは多元接続の方式を具体的に表現するときに用います。 公共通信に絞ってみると、まず上り(携帯端末から基地局へ)と下り(基地局から携帯端末へ)は下記のどちらかで分割します。

    周波数分割2重    Frequency Division Duplex (FDD)
    時分割2重               Time Division Duplex (TDD)

次に、上り下りの各々について、たとえば下記のような多重化が施されます。

    周波数分割多重         Frequency Division Multiplex (FDM)
    時分割多重               Time Division Multiplex (TDM)
    符号分割多重            Code Division Multiplex (CDM)

実際の多重化は、これらの組み合わせで実施されています。 たとえば、現行の携帯では、

     PDC FDD/FDM/TDM (上り下りの周波数帯域は別で.FDMの後でさらにTDM)
     PHSTDD/FDM/TDM (上り下りは時間で切り替え、FDMの後でさらにTDM)
     w-CDMAFDD/CDM
     CDMA2000TDD/CDM

といった具合です。 このような多重化で共通することは、接続の継続を保証すること、および混んでくると新たな呼を受け付けないことです 。このことは、端末が隣接基地局に移動した場合も保証されています。 要するに、完全座席指定制というわけです。
以上は主に認可の必要な公共通信の多重化ですが、手軽にかつ小領域で使う場合では、もっと柔軟な多重化方法が広く採用されています。 その多くは、メッセージをパケット単位(あるいはスロット単位)に小分けして送り、誰も送っていなければ送信し、もし他人のパケットと衝突したときは破棄して再送するという荒っぽい方法です。 この方法の特徴は、少人数で通信を占有するときはものすごく高速伝送ができ、逆に端末が多くなると通信速度がどんどん低下することです。 しかし、ビジー状態にはなりません。 超高速を享受できる代わりに、超低速も覚悟しなければならないというわけです。 この多重化法の代表的なものはイーサーネット(Ether Net )です。 イーサーネットでは、誰も通信していない時間を狙って、パケットを送り出します。 そして、衝突を検出したら全員にジャム信号を発してパケットの再送に移ります。 このような原理を CS(Carrier Sense)MA / CD(Collision Detection ) と呼んでいます。
最近の無線LAN(IEEE802.11b Bluetooth などは、どのように分類していいか迷うところです。 無線LANは、まず帯域をFDMし、一つのチャンネルを基地局に割り付けます。 基地局内では Carrier Sense によるイーサーネットのような手順を実行して多重化します。 変調は10M [複素シンボル/秒] のQPSKなので、本来ならば20M [ビット/秒] の情報伝送速度が可能です。 ただし、長さ8の4値複素シンボル列に8ビットを写像しているので結局10M [ビット/秒] になっています。 無線LANでは、この操作をCDMAといっていますが、むしろエラーレート改善のための多元伝送 (M-ary Transmission ) と呼んだ方がいいと思います。 したがって、無線LANはイーサーネットと同じ分類に入れるのが妥当です。 一方、Bluetooth周波数ホッピングという多重化法を採用しています。この原理はタイムスロットを切って、FDMチャンネルの割り付けをランダムに変化させることです。 79MHzの帯域幅を79分割し、各チャンネルは1M [ビット/秒] の2値FSKです。 基地局(マスター)が収容する端末(スレイブ)の最大個数は7であり、マスターはチャンネル割り付けがダブらないように上手くスケジューリングします。 この場合、帯域の拡散率は79/7ということになり、CDMAと同様に、スペクトル拡散の範疇に入れるべきでしょう。 時間軸でみると、 Carrier Sense しない同期スロット方式ですが、昔のスロッテドアロハを想い起こします。 Bluetooth がCDMAではなく、周波数ホッピングを採用した理由は、微小電力無線特有の厳しい遠近問題と衝突の軽減に対処しやすい点にあると思われます。

注1 : 多重化のもう一つの方法として、空間多重(SDMA : Sapce Division Multiple Access)があります。 これはアンテナの指向性を絞って、特定の端末あるいは特定のエリアと通信するという方法です。 もし無線でこれが正確にできれば、周波数以外の強力な多重資源を得ることができます。 これを実現するには、伝播方向と焦点が制御できるアダプティブ・アンテナの技術が必要になります。 空間分割多重は、周波数が高くなるにつれて有利になります。 最近、ミリ波(約50GHz以上)が急に注目されていますが、直進性が強く、5度以内のビーム通信が可能なので無線資源を一気に拡大する強力な領域となっていくかもしれません。

注2 : 高周波帯域を十分広く(10〜20GHz)とって、ナノ秒以下の細いインパルスを用いて通信しようという試み(UWB: Ultra Wide Band)が進行しています。 信号のエネルギーを一定にして、パルスの高さ(瞬間的電圧値)を大きくしようという狙いです。 帯域内で周波数分割して使っている現行の通信にとって、無視できるぐらいのパワーに抑えればいいというわけです。 ただ、この方向が本当に意味があるかどうかは、技術的・理論的な要素以外のものが関わってきそうです。

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